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総合力で食事中の事故を防ぐ

執筆者の写真: PLIMES Matsuda Saho
PLIMES Matsuda Saho
1 日前
読了時間: 5分

—— 誰かを守る人が不安を抱えないために


写真:左から、小畑 ひさ子さん、北條 裕嵩さん、田中 大輔さん
写真:左から、小畑 ひさ子さん、北條 裕嵩さん、田中 大輔さん








取材協力:北條 裕嵩さん(言語聴覚士)



誤嚥性肺炎による入院、脱水や窒息による急変。こうした事態を防ぐため、ハートケアグループでは5年前から、専門職と現場スタッフが一緒に食事を支える体制を築いてきました。

取り組みの中心となるのが、有料老人ホーム入居中の利用者を対象として、食事の課題を持ち寄る「誤嚥・脱水防止委員会」です。毎週、現場での気づきや食事の記録を持ち寄り、多職種で検討しています。その中でGOKURIは、食事の映像や音、波形を後から見返し、同じ場面を共有するために使われています。


誰かを守る立場にあるスタッフが、判断を一人で抱え込まないために、どのような仕組みがつくられているのでしょうか。北條さんをはじめ、取り組みに関わる皆さんにお話を伺いました。


日常の気づきを、事故予防につなげる


食事の様子、座っている姿勢、食べるのにかかる時間、口の中の状態。一人ひとりの日常には、食支援を考えるための情報があります。ハートケアグループが大切にしているのは、専門職の知識だけでなく、入居者のそばにいるスタッフの観察を支援につなげることです。


誤嚥・脱水防止委員会への相談は、現場スタッフの気づきから始まります。食べにくそうな様子がある、食事量が減った、食事形態を見直したい。そうした変化が見られたとき、動画や情報シートを用意して委員会へつなぎます。


相談は、状態が悪化した場合に限りません。本人の希望や、しっかり食べられている様子を踏まえ、「食事形態を上げられないか」という相談もあります。退院後に施設へ戻ったときや、新たに入居したときも確認の機会です。病院や自宅で提供されていた食事形態が、現在の状態に合っているかを検討します。

小さな変化に気づいた人が、それをほかのスタッフや専門職へ伝えられる。日常の観察を事故予防につなげる仕組みとして、委員会が機能しています。


GOKURIの記録を、多職種の判断材料に


ハートケアグループでは、2025年度にGOKURIを3台導入し、グループ10施設のうち3施設で運用しています。

委員会には、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、歯科衛生士、介護職など9~10人が参加。1回につき平均3~4件、多いときには7件ほどを検討します。


その場で食事を見たスタッフの報告に、GOKURIで記録した映像、音、波形を加えることで、食べていたときの状態を後から確かめられます。クラウド上のデータは専門職も確認し、現場から寄せられた情報と合わせて検討します。


記録が残っていれば、その場にいなかった人も検討に加われます。同じ食事場面を見ながら、姿勢や食べ方、口腔内の状態、栄養など、それぞれの専門性から意見を出すことができます。

週に一度、相談できる場があることはとても重要です。現場で得た情報を専門的な検討へつなぎ、そこで得られた視点を再び日常の支援へ戻す。一人の判断に頼らず、複数の目と知識で支えるための循環が生まれています。


撮り方と見方を共有し、観察する力を育てる


記録を検討に生かすには、必要な情報が適切に映っていることが欠かせません。ハートケアグループでは、食事場面を撮影するスタッフに向けて、北條さんの指導をもとに撮影の見本を用意しています。

正面と側面から、食事中の姿勢、足が床についているか、座り方、机と身体の位置関係などを確認します。何を撮影し、どこを見るのかを、現場と専門職の間で共有するための工夫です。


食事場面の撮影見本。職員向けに、動画を作成。正面・側面から、姿勢や机と身体の位置関係などをわかりやすく解説。
食事場面の撮影見本。職員向けに、動画を作成。正面・側面から、姿勢や机と身体の位置関係などをわかりやすく解説。

情報シートには歯の図も設け、義歯の位置や歯の欠損を記録します。歯の本数だけでなく、どの位置に歯があるのか、食事にどれくらい時間がかかるのか、どの程度食べられているのか。身長や体重、栄養摂取の状態も含めて確認します。

こうした報告を重ねる中で、スタッフの観察にも変化が生まれているといいます。

「委員会では、専門職の皆さんから、どのような情報が必要かを自然と問われます。相談する介護スタッフは、次はそれを準備しておかなければ、と思うようになる。重要な情報への理解が高まっているのだと思います」と北條さんは話します。

専門職からの問いや説明を受けることで、次の食事では見るところが変わります。一人の入居者について検討した経験が、別の場面での気づきにもつながる。委員会は個別の相談に対応するだけでなく、スタッフが観察の視点を身につける場にもなっています。


判断を支え、誰にでも伝わる仕組みへ


GOKURIがあることで、嚥下の状態を食事中のその場だけで判断する必要がなくなります。映像に加えて、飲み込む音や波形が記録されるため、食事の様子を後から繰り返し確認できます。

言語聴覚士や看護師などの専門職にとっては、利用者が食事のどこで困っているのかを、複数の情報から検討する材料になります。介護スタッフにとっても、気になった場面を記録に沿って示せるため、専門職へ状況を説明しやすくなります。その場にいた人の感覚だけに頼らず、同じ記録を見ながら話し合えることが、多職種での判断を支えています。

今後のGOKURIに期待されているのは、専門職以外にも嚥下状態の傾向が感覚的に分かる、シンプルな画面表示です。個人の値と平均値を比較したり、波形に目安を示したりすることで、データの変化をより捉えやすくしてほしいという意見が寄せられました。

また、現在は手書きと入力が混在している情報シートをGOKURIのデータとまとめ、報告書類の作成を簡素化する機能も求められています。


北條さんに、言語聴覚士としてハートケアグループに関わるモチベーションを伺うと、「やはり、楽しく食べてほしいと思っています。食事は人間にとって楽しみだと思うので」とお答えいただきました。


PLIMESでは、食事場面の確認から多職種での共有、記録・報告までをどのように支援できるか、現場の運用を踏まえながら機能の検討を進めます。目指すのは、「シンプルで分かりやすく、誰が見ても分かる」仕組みです。その先にあるのは、ハートケアの皆さんが目指すことと同じく、安全に、食事を楽しみ続けられることです。

専門職の知識と、日々そばにいるスタッフの目と手を合わせる。GOKURIに残された記録を見返し、複数の人で話し合う。食事を支える人が一人で不安を抱えないことが、入居者を守る体制につながっています。



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