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経口維持管理の質を守るために

  • 執筆者の写真: PLIMES Matsuda Saho
    PLIMES Matsuda Saho
  • 19 時間前
  • 読了時間: 4分

——副施設長・看護師 島さんが語る嚥下評価体制の再構築


島宗充 さんと八尾英人施設長(右)
島宗充 さんと八尾英人施設長(右)










見学日:2026年2月13日
取材協力:副施設長、看護師 島宗充 さん

特別養護老人ホームあんりは、大阪府にある全室個室のユニット型施設の介護老人福祉施設です。ご入居者・ご家族の意向に丁寧に寄り添い、多職種が連携して、「その方らしい暮らし」を支えています。

10年ほど前から、看護師の資格を持つ現施設長・八尾英人さんを中心に「利用者優先」の視点に立った食事提供と、その喜びを支えるための食支援に継続して取り組んできました。安全を前提にしながら、できる限り口から食べ続けられる環境づくりを進めています。


生活を守るための嚥下評価

「摂食・嚥下機能の評価は、制度上の算定要件を満たすためでもありますが、私たちにとっての本来の目的は、ご利用者の生活を守ることにあります。」

副施設長であり看護師でもある島さんは、そうお話しされます。施設ではNST(栄養サポートチーム)として各フロアに1〜2名の介護職員、看護師、機能訓練指導員、管理栄養士、施設相談員、ケアマネジャーが関わっています。栄養マネジメント強化加算は利用者全員で取得、経口維持加算は現在約45%で算定しています。「刻み食の方までを嚥下障害と判断すれば対象は8割を超えると思います。でも、評価の精度が落ちることが怖い。数字を上げるより、質を守ることを優先しています。」

制度と向き合いながらも、判断の精度を守る姿勢が前提にあります。


ST不在という構造的課題とNST再編

一方で、施設には常勤の言語聴覚士(ST)がいません。頸部聴診を体系的に学ぶ機会は限られ、嚥下評価は一部の担当者に集中していました。

「評価に自信が持てない。音は評価者しか聞けず、後から確認も共有もできない。それが一番の課題でした」

担当者が変われば判断も変わる可能性がある。チーム全体のアセスメント力を底上げしたいという思いが、NST再構築の出発点になりました。リーダーと副リーダーを明確にし、機能訓練指導員、管理栄養士、介護職が役割を担う体制へ再編。来年度からは各専門職が意見を出し合いながらケアを設計する体制へ移行します。介護福祉士資格を持つ職員も含め約20名が嚥下評価に関われる状態を目標とし、属人的技術にしないための教育を進めています。


評価の「見える化」と精度の検証

その過程で出会ったのがGOKURIでした。「見える形にしなければいけないと思った」と島さんは振り返ります。従来の頸部聴診では音はその場限りでしたが、GOKURIは音をデータとして保存し、波形や数値として可視化できます。クラウドで共有し、後から聞き返すことも可能です。これにより「一人で抱えていた評価を、みんなで確認できる」環境が整いました。以前はNSTリーダーがほぼ全ての嚥下評価を担っていましたが、現在はデータをもとに他の担当者へ移行できています。GOKURIのスクリーニングプロトコルの食事能力判定(GOST)や改定水飲みテスト(MWST)を活用しながら、2025年度は従来の頸部聴診との妥当性を施設内で検証し、2026年度からはGOKURI主体で水飲みテストを実施する予定です。安全性を確保しながら、多職種がスクリーニングに関われる体制と経済効率の両立を目指しています。


食支援で生きる尊厳を、そして組織の力へ

島さんにとっての生産性向上は、単なる効率化ではありません。「限られた介護人材で、より良い介護をすること。事務的な仕事を減らし、ご利用者に向かう時間を増やすこと」です。八尾施設長の強い信念のもと、委託給食から直営化へ移行し食事の質は向上しましたが、「おいしいご飯が出ても、食べる能力がなければ意味がない」という現実にも直面しました。

「1日でも長く、口からおいしいものを食べてもらいたい。それは人権や尊厳の問題です。ただし、安全が前提です。」嚥下評価は食形態を下げるためのものではなく、食べる力を引き出すためのものへ。その転換をエビデンスで支えたいと語ります。誤嚥性肺炎による入院を限りなくゼロに近づけるために、経口維持加算率の向上の背後には、精度を守る姿勢があります。最終的に判断するのは人ですが、根拠の有無で判断の質は変わる。嚥下評価を個人技から組織の資産へと転換する基盤として、GOKURIは位置づけられています。

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