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「つながり」で地域医療をかえていく

  • 執筆者の写真: PLIMES Matsuda Saho
    PLIMES Matsuda Saho
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分

——患者さんがどこに住んでいてもとりこぼさない歯科支援









新潟大学 医歯保健学研究科

取材協力:真柄 仁さん


在宅での医療ニーズは急速に拡大しています。なかでも摂食嚥下障害は、誤嚥性肺炎や低栄養のリスクと直結しますが、専門的に診ることができる医師・歯科医は全国的に不足しています。新潟大学は2014年から新潟県歯科医師会と連携し、「摂食嚥下治療登録医制度」を通じて専門歯科医の養成に取り組んできました。地域の歯科クリニックの外来や訪問での歯科診療のなかで、摂食嚥下障害の治療について、大学の専門医から指導を受け、現場との情報連携を円滑に進められるよう、クラウドファンディングを活用した遠隔支援システムの運用も開始しています。日本が抱える医療課題に新潟から先頭を切って挑む、真柄さんにお話を伺いました。


「診療が途切る危うさ」──制度をつくった出発点


病院でのリハビリを終えて在宅に戻った患者さんが、嚥下評価の継続も難しく、診療が途切れてしまう、その現実が、約20年前の新潟大学病院にはありました。

「入院していた時はリハビリができても、家に帰った時に誰も診てくれる人がいない。外来に来られる方はいいんですが、そうでない方は評価も治療も途切れてしまう。その患者さんが大多数だった」と振り返ります。

この状況を変えようと動いたのが、真柄さんが所属する新潟大学 摂食嚥下リハビリテーション学分野のチームでした。地域のクリニックの歯科医師の「往診で摂食嚥下障害の患者さんを診た時に、どうしていいかわからない。摂食・嚥下を勉強したいです」という声から、地域で摂食嚥下に詳しい歯科医師を増やしていこうということで「摂食嚥下治療登録医制度」が2014年に発足しました。新潟県歯科医師会との連携事業として、2026年3月末時点での修了者は28名に上り、近隣の他県からの受講者も含みます。

「研修を受けて修了した歯科医が、地域でも評価できるようになってきた。私たちからも、この患者さんならあの先生に紹介していいよね、という中継点が県内にできつつあるかな、というのがこの制度の成果だと思っています」


「人」をつなぐ次の課題──OISHIENの発想


登録医のネットワークができてきた一方で、新たな課題が見えてきました。診られる先生は増えてきたものの、専門医と登録医がつながるだけでなく、そこに関わるケアマネジャー、介護士、訪問看護師といった多職種も含めた、患者を中心とした医療者間の連携の仕組みが必要だという実感が生まれていました。

専門家への相談も、つながりがなければきっかけすら生まれません。顔見知りがいれば「この患者さんどう思う?」という話が自然に生まれますが、関係性のないところに相談は起きない。そういった現場感覚が、OISHIENの開発・導入につながりました。

OISHIENは、患者を中心に担当医療者と専門医が情報を共有できるシステムで、GOKURIクラウドと同様のコンセプトを持ちます。現在、登録医の多くに案内し、一部が実際に活用しています。

ただし、多職種まで巻き込んだ活用はまだ発展途上で、管理栄養士やST(言語聴覚士)が関わっているケースは2〜3件という段階です。普及の壁として真柄さんが挙げるのは、操作や認証のハードルだけでなく、個人情報をオンラインに上げることへの心理的抵抗です。メールアドレスの扱いやデータのオンライン管理をめぐって導入をためらう医師がいる一方、LINEで患者の写真を送っている医師もいる。セキュリティと利便性のバランスは、依然として難しい課題です。


GOKURIは「データをつなぐ橋」になる


GOKURIはネックバンドを2台購入し、1台は在宅診療に携わる医師への貸し出しに使っています。用途は大きく3つです。


病棟での経時モニタリングでは、嚥下障害患者の食事場面を継続記録し、嚥下回数や食事時間の変化を追います。一食あたりの嚥下回数や食事にかかる時間を継続的に記録することで、状態の変化を客観的に把握できます。


外来患者への機器貸し出しでは、退院後も通院している60代の患者に機器を貸し出し、自宅での姿勢調整の効果を評価しました。患者用のIDを発行し、その患者だけがアクセスできる形で運用したところ、姿勢によって嚥下回数が異なることが確認され、外来での活用可能性が広がりました。


在宅・施設訪問医師との連携では、GOKURIを使って月1回程度のモニタリングを行い、変化があれば専門医に相談できる体制を構築しつつあります。問題のある患者のデータを共有できれば相談しやすくなる——GOKURIがその橋渡し役を担うことを目指しています。


このモデルの実践例として動き始めているのが、新潟市の福祉グループとの取り組みです。複数拠点に試験機を貸し出し、3〜6か月ごとの定期スクリーニングを標準化し、変化があれば歯科医師や大学病院につなぐ流れを設計しつつあります。まずスクリーニングを標準化してデータを蓄積し、問題が上がった患者に専門医が関わる体制を整え、それを地域モデルとして確立することが目標です。


地域医療の次の形


真柄さんが今後描くのは、OISHIENにオンライン診療の機能をのせることです。テキストと動画の共有にとどまらず、ビデオ通話で専門医が施設の患者を診られる形が実現すれば、地域の診療体制はさらに変わります。嚥下のデータがあり、映像が見られ、その上でオンラインコンサルテーションができる——そこまで整えば、地域の患者の行き場が確保できると考えています。

厚生労働省が医療と介護をつなぐモデル地域の構築を進める中、新潟ではすでに20年近くかけてその基盤が積み上がってきました。登録医のネットワーク、OISHIENによる情報共有、GOKURIによるデータモニタリング、これらのレイヤーが重なるとき、「食べる」を地域で支えるシステムが動き始めます。ていねいに実績を積み上げていくことが次の展開につながる。真柄さんは、地域医療の未来に続く確かな手応えを掴み始めています。


OISHIENは、新潟大学が開発した摂食嚥下障害在宅診療支援の情報共有アプリです。患者を中心に、担当医・専門医・ケアマネジャー・訪問看護師など多職種がテキストや画像を共有できるタイムライン型のプラットフォームで、GOKURIクラウドと同様のコンセプトを持ちます。

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